レッドキャップとは?血染めの帽子・鉄の靴・古城に棲む怪異を原典から読む

霧に包まれた廃城で、赤い帽子と鉄の靴を身につけ、左手に長い杖を持つ小柄な老人のレッドキャップ。 怪異
英国国境地方のレッドキャップ伝承をイメージした挿絵。赤い帽子、鉄の靴、先の尖った杖を持つ老人の姿を描いています。

夜をしのぐために入った廃城に、小柄な老人がいる。頭には赤い帽子、足には鉄の靴。その帽子は、殺した旅人の血を受けて赤く染まるのだという。

レッドキャップ(Redcap)は、スコットランドとイングランドの国境地方の古城や塔と結びつけて語られる怪異です。赤い帽子と鉄の靴を身につけ、避難してきた旅人を襲うと伝えられます。ただし、同じ名前で呼ばれる存在が、どの資料でも同じ性質を持つわけではありません。ここではウィリアム・ヘンダーソンの伝承集の1879年増補版と、ウォルター・スコット編の詩集に収められた「Lord Soulis」を読み分けながら、その姿を見ていきます。

レッドキャップはどんな怪異?

ヘンダーソンの『Notes on the Folk-Lore of the Northern Counties of England and the Borders』第7章では、RedcapのほかにRedcomb、Bloody Capという呼び名が挙げられています。住む場所は、かつて圧政の舞台となった国境地方の城や塔、要塞化された住居。家事を助けるブラウニーとは異なる、残酷で悪意ある存在として紹介されます。

描写されるのは、背が低く、がっしりした老人です。長く突き出した歯、鷲の爪のような爪を持つ細い指、大きく赤く燃えるような目があり、髪は肩まで垂れています。鉄の靴を履き、左手に先の尖った杖を持ち、頭には赤い帽子をかぶります。これは、この伝承集に記された姿です。すべての時代・地域に共通する唯一の外見とする必要はありません。

出典:ヘンダーソン、第7章

帽子はなぜ赤い? 逃げ込んだ場所が危険になる

この記録で襲われるのは、夜になり、あるいは泊まるところがなく、怪異の住処に避難してきた旅人です。レッドキャップは大きな石を投げつけ、さらに命を奪って、その血を帽子で受けると語られます。帽子の深紅は、この行動に結びつけられています。

廃城は本来、雨風や暗闇を避けられる場所にも見えます。しかし物語では、避難先そのものが危険なのです。古い建物に残る暴力の記憶が、そこへ入った旅人を襲う姿に重なる。そう読むと、赤い帽子は外見の目印だけでなく、その場所の恐ろしさを伝える小道具になります。これは描写に基づく読み方であり、怪異の起源を実証する説明ではありません。

なお、この箇所に「帽子の血が乾くとレッドキャップが死ぬ」とは書かれていません。血で帽子を染める話から、別の生存条件まで補わないようにしたいところです。

出典:ヘンダーソン、第7章

聖句と十字架で退けるという伝承

同じ章には、怪異を退ける方法も載っています。聖書の言葉を唱えるか、十字架を掲げると、レッドキャップは恐ろしい叫びを上げる、あるいは炎の中に消え、最後にいた場所に大きな歯を残すといいます。

ここで興味深いのは、鉄の靴を履いている点です。この資料のレッドキャップを、「妖精だから鉄に触れられない」と一律に説明すると、本文の姿と食い違います。退ける手段も、鉄一般の性質ではなく、この記録が挙げている聖句と十字架に即して読むのが確実です。

これらは伝承の中の対処法であり、実際の危険を回避する方法として確かめられたものではありません。

出典:ヘンダーソン、第7章

「Lord Soulis」のレッドキャップは領主を守る

別の姿を見せるのが、スコット編『Minstrelsy of the Scottish Border』に収められたジョン・レイデン作「Lord Soulis」です。第3版・第3巻の作品見出しにも作者名が明記されており、スコットは収録本の編者、レイデンはこの詩の作者です。

詩の冒頭では、ハーミテージ城のソウリス卿の隣に、老いたレッドキャップが座っています。そして槍や矢、剣や刃物から卿を守ると告げ、ふるった砂で作った三重の縄が身体に巻きつくまでは、鋼や麻の縄でも拘束できないと約束します。

旅人を襲う廃城の怪異と、暴虐な領主の命を守る存在。役割は異なりますが、古城と暴力に結びつく点は共通しています。ヘンダーソンもこの詩を引用してレッドキャップを説明しています。そのため、二冊に似た記述があることを、独立した二件の目撃証言として数えることはできません。

出典:スコット編『Minstrelsy of the Scottish Border』第3巻「Lord Soulis」および前書き

ハーミテージ城の歴史と、領主の伝説を分ける

ハーミテージ城は実在します。Historic Environment Scotlandの文化財指定資料では、現在の石造の城は主に14〜15世紀に築かれ、1830年代にも大規模な修復を受けたと説明されています。また、スコットの著作やレイデンの詩が、城とその伝説を読者に広めたことも評価されています。

現存する石造の城を、そのまま伝説の時代の姿とみなすこともできません。城が残っていることは、そこにレッドキャップがいた証拠にはならないのです。領主が釜で煮殺されたという話についても、スコット編の前書き自体が、領地没収と幽閉の説明から「地方の伝承」へと話を分けています。城の建築史、歴史上の人物についての記述、怪異の登場する物語は、それぞれ別の根拠で読む必要があります。

出典:Historic Environment Scotland・ハーミテージ城の指定資料、「Lord Soulis」前書き

同じ名前でも、家事を助ける場合がある

ヘンダーソンは、オランダでレッドキャップと呼ばれる存在についても紹介しています。そちらは家に結びついて働き、服を贈られると去るなど、ブラウニーに近い性質を持つと説明されます。

つまり、名前の一致だけで、すべてを「血染めの帽子をかぶる殺人者」にまとめることはできません。今回の主題は、国境地方の城や塔に棲むとされたレッドキャップです。土地と資料を確かめることで、似た名前の怪異の違いも見えてきます。

出典:ヘンダーソン、第7章

ほかの土地の怪異と読み比べる

スコットランドの怪異を読み比べるなら、水辺の馬として語られるケルピーも手がかりになります。また、アイルランドのバンシーでは、泣き声と家族の死の予告が結びつきます。古城、水辺、家族と、それぞれが関わる場所や人間との関係に注目すると、怪異ごとの違いが見えてきます。

まとめ

レッドキャップの怖さは、赤い帽子や鋭い歯だけにありません。助けを求めて入った城が旅人を襲う場所になり、領主を守る力が暴力を支える力にもなる。古城にまつわる異なる語りを並べると、その不気味さが浮かび上がります。

今回の資料から確認できるのは、こうした姿や物語が19世紀の本に記されていることです。刊行年は怪異が生まれた年でも、語られた事件が起きた年でもありません。伝承集、作者のいる詩、現在の文化財資料を分けて読むことが、レッドキャップを知る手がかりになります。

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